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脱線工作が面白いー75歳の発言 摺本好作展 [絵の周辺と展覧会]

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小学生の頃、そう昭和30年代の話だが、木製の自動車模型をよく作った。
乗用車の側面の形をした板が2枚、(たぶん)ゴム製のタイヤが4個、
それと車軸にするヒューム管(これもたぶん)、そんなパーツがビニールの袋に入っていた。
それを文具店の店先で飽きずに眺めていたものである。
いったいどんな自動車ができるのだろう?と、胸を躍らせながら。

そんな50年以上も昔のことを思い出させてくれる作品展を見た。

脱線工作が面白い ー 75歳の発言
摺本好作展


長年、お付き合いいただいている先輩から知らせをいただき、
これはきっと面白そう、と久しぶりに銀座へ向かう。
そして中身は、いやはや想像以上。。。

子供の頃の木製自動車キットは、
あまりの精度の低さ、それとあっという間に広まったプラモデルのおかげ?で、
記憶の彼方へ行ってしまった。
今回の摺本さんの作品は、その私自身の昔の記憶と、
どこかで重なるものもあるが、もちろんまったく別世界のものづくりである。

・木製品の暖かみ
・玩具なのに、実車の雰囲気があること
・デフォルメのユニークさ
・(とくに正面から見たときの)車の表情の豊かさ
などなど、実に多くの発見がある。
圧倒的に車が多いけれど、飛行機や動物、
高さが1m50cmを超えそうな観覧車の模型、
(これが小さなマブチモーター二つでゆっくりと動く!)
それとなんともスリリングな仕掛けのあるヘリコプターのオブジェ?
そのどれもが、実に柔らかく優しいフォルムにまとめられている。

ご本人は、“この歳になってようやく次から次へと
作りたいものが湧いてくるようになった”と話されていた。
ちなみに摺本さんは現在75歳、
いまでも毎週バイクツーリングにも出かけるというお元気さ。
(このバイクのイラストレーションが、また凄い。
 会場にも数点展示されているし、専門の本も数多く出されている)

摺本さんの経歴も、お話を伺えば実に面白いが、
ビックリしたのは、私が昭和30年代に初めて作った
「原子力潜水艦ノーチラス号」のプラモデル、
その説明図を描かれているのが摺本さんだったことが判明したこと。
当時のプラモデルの箱のイメージも蘇り、これには、ほんとうに驚いた。


ところで昭和30年初め頃に、少年が手にした木製キットについて少々。

側面の板は厚さが7ミリくらいはあっただろうか?
要は平らな板を糸鋸状の機械で車の横の形に切り抜いたものである。
まぁ、子供向けの安い玩具だから形も仕上げも精度もたかがしれている。
これは、子供にはこういった単純化した形が良いのだという理念よりも、
製品としての作りやすさを優先したための形だったと思う。

ボンネットやルーフがどうなっていたのか?
その辺は記憶が曖昧で何とも思い出せないが、
たしか厚紙で自作するようになっていたと思う。
もちろんある程度の説明図面を見ながら、かなり適当に作るのだ。

その板を真横から見ると、たしかに車の曲線は出ているが、
正面からの眺めは悲惨である。
なにしろ平らな板を切り抜いただけだから、形のニュアンスなどどこにもない。
もちろん、当時の実車も今の時代と比べれば、きわめて平面的というか、
曲面の多用など望むべくも無い時代だった。
それでも、T型フォードの時代でもあるまいし、車にはそれなりの曲面がある!
これが10歳ほどの少年の心をいたく悩ませたのだ。

直角に切り落とされた板の角を肥後の守で削ったり、
サンドペーパーをかけたり、ともかくあの手この手を使って「曲面」に挑戦した。
いま、同じものを作ったら意外に楽しいかもしれないが、
当時は、そのちゃちさに落胆したものだ。
ま、それでも車も模型作りも好きだから、作り続ける。
そんな少年が日本中のいたるところにいたのだ。(と思う)
プラモデルの登場以前、テレビ放送もようやく始まった頃、
模型作りはやはり楽しい遊びだった。

ついでに書くと、
もうひとつ悩ましかったのが、窓のガラスである。
模型キットには「ガラス」は入っていない。
窓は素通しのままである。
完成品を眺めながら、なんとか窓を作れないか?
そんな少年がすぐに思いついたのが、透明な下敷き。
それをフロントウィンドウの形をイメージして曲げる。
というと簡単そうだが、これがなかなかタイヘンなのだ。
熱を加えればなんとかなる、と子供心に思いつき、
ろうそくの火で炙ってみたりした。
結果は、熱が回りすぎて見事に溶けてしまったり、失敗の連続。
下敷きなど安いものだが、そうそう何枚も買ってもらうわけにもいかず、、、
もちろん、均一で美しい曲面など、いちども完成したことがない。

ついついこんなことを思い出してしまったが、
木を自由に削って生み出された摺本さんのクルマ(他の作品も)は、
大きなものも小さなものも、みんなとてもあたたかい。
真似をして、ちょっと木を削ってみようか、などとつい思ってしまうのである。


作品展は2月の21日まで。
展示作品の数も多い、また販売されているものもあるが、
それが「0」がひとつ足りない?と思うほどのお値段。
いや実にいろんな意味で愉快な作品展だった。

◆脱線工作が面白い ー 75歳の発言  摺本好作展

◆作品紹介

◆ブログ:摺本好作のムフフ工作日記

タグ:摺本好作
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しろのぽ

これ、楽しそう!
1000円握りしめて(笑)行きたくなっちゃう人は多いのではないでしょうか。(ワタシもです)
バイクのイラスト、フリーハンドですよね?
さすが、しっかりした描線で、見入っちゃう上手さです。
ワタシは木製模型キットを知らない世代ですが、精度が低いだけに、作り手の創意工夫が入って面白いのでしょうね。
最近のプラモデルなんか精度が高くて、接着剤すら使わずにパチパチはめたらできあがってしまうそうで・・・つまんないなあ(笑)

by しろのぽ (2011-02-18 22:41) 

よしあき・ギャラリー

子供の頃の工作は、私の場合模型飛行機でしたが、失敗を重ねながらも独自の工夫を考えたものですね。
懐かしいです。

幾つになっても夢を追いかけることは大切と、あらためて考えました。私も頑張らなくては・・・
by よしあき・ギャラリー (2011-02-19 06:12) 

mimimomo

おはようございます^^
工作が得意な方はいいですね~ わたくしには夢でした^^ 図工の時間に
本箱を作ったことがあります。同級生の男の子に手伝ってもらいました^^
でも見るのは好きだし、プラモデルも作ったことがあります。
楽しそうですね~ 摺本さんの展示会。ちょっと期限が迫っていますね。
by mimimomo (2011-02-19 08:32) 

ミモザ

おはようございます♪
私も工作はあんまり得意ではなかったですが作品を見るのは
大好きです。手先の器用な方を尊敬してしまいます。
作品展はもう終盤なのですね。沢山の方が来場なさったのかな。
「ムフフの工作教室」って・・^m^ 目を惹きますね。
by ミモザ (2011-02-19 08:59) 

ぶんじん

へぇ、これは面白そうですねぇ!まさに手作りのおもちゃだなぁ。私はプラモデル世代だったので、木製のは経験がありません。でも、出来の善し悪しに関係なく、作る過程がとっても楽しいんだろうなというのはわかる気がします。
by ぶんじん (2011-02-19 09:23) 

いそしぎ

楽しそうな展覧会ですね!
木製の模型は記憶にないですが、姉が親戚からグリコのおまけの木製玩具をもらい、大事にしていた記憶があります。
私が小学生時代、男の子はガンダムのプラモデルに夢中になっていました。
同じ型でも、色の塗り方やちょっとした改造でオリジナリティーを出していました。
by いそしぎ (2011-02-19 20:34) 

JF

丸みがあるものって、ほっこりします。
木には温もりがありますね~♪
専門的なことはわからないんですけど、
この丸みの中にもシャープな 線 があるのでしょうか・・・
だから洗練されたかんじがするのでしょうか・・・(^^)
by JF (2011-02-20 13:40) 

カズ−

ヒューム管、ノーチラス号、、、懐かしい言葉ばかりです。
私は小学校のある年の夏休みの工作の宿題に、かまぼこの
板で作った車のシャシーに画用紙でジープのボディーを作り
乗せました。
by カズ− (2011-02-20 20:02) 

gwan3

「マブチモーター」なんて言葉を聞いたら胸がキュンとなりますね^^
木製工作といえば、もっぱらバルサを買ってきて、切り刻んで、やり直して、で結局何もできなかったということを何度も何度も繰り返していました。
あー懐かしいです^^
by gwan3 (2011-02-21 11:15) 

e-g-g

◎しろのぼさん
バイクのイラスト、年季入ってます、凄いですよ〜

>最近のプラモデルなんか精度が高くて
それでも、作るだけ良いのではないでしょうか、
ゲームに熱中するよりは、、、

◎よしあき・ギャラリーさん
模型飛行機は私もよく作りました。
なかでもゴム動力のライトプレーン、あれは面白かったですね。
いろいろと工夫しないと飛ばず、そこがよかったのでしょう。

◎mimimomoさん
子供の頃は図画工作の時間がいちばん好きでした。
摺本さんの作品は、
そんな忘れていた記憶を呼び覚ませてくれました。

◎ミモザさん
ワタクシ、手先は器用でしたから工作は大得意でした。
でも、大人になってデザインの仕事をしたり、
絵を描くようになると、その器用さが邪魔になることにも
気付きました。なかなか難しいです。
工作教室もきっと面白かったと思いますよ。

◎ぶんじんさん
作る過程、大事ですよね。
マウスを握りしめるだけでなく、手を使わないとアカン!
と、しみじみ思いますね。

◎いそしぎさん
グリコのおまけも懐かしい!
で、いそしぎさんはガンダム世代ですか、、、
なんとお若い、、、

◎ J F さん
仰るとおりです。
摺本さんの作品は、ほわっと暖かいのですが、
きちっと計算された線と面がピタッと決まっているんですね、
気持ちの良い造形です。

◎カズーさん
かまぼこの板、私もずいぶんと使いましたよ。
大きさ、厚み、それと加工のしやすさがちょうど良いのですよね、
いまでも、そのまま捨てるのが惜しくて、、、

◎gwan3さん
はやくマブチモーターを乗せたくて、
ついつい加工を急ぎすぎて、結局中途半端なものが、、、
私もたくさん作りました。。。

by e-g-g (2011-02-21 14:28) 

Silvermac

子供の頃はゴム動力の飛行機を作ったことをも出しました。
by Silvermac (2011-02-21 16:04) 

海を渡る

ご無沙汰しておりました。
いろいろ展覧会に行かれたんですね。
近ければ行ってみたい展覧会ばかりです。
摺本好作展はこどもの頃を思い起こさせてくれそうです。
by 海を渡る (2011-02-21 16:41) 

barbie

近ければ行って見たいです。車のウインドー今ならクリアファイルが使えるかな(^^v
by barbie (2011-02-22 08:08) 

絵かきさん

お元気で活躍何よりですね。銀座
三越松坂屋懐かしい・・・

by 絵かきさん (2011-02-22 10:17) 

つなみ

木のぬくもりは、心地良いですネ(*^_^*)
by つなみ (2011-02-23 12:58) 

e-g-g

◎Silvermacさん
ゴム動力の飛行機、懐かしいですね、
あれは作り手の技量がけっこう問われるんですよね。

◎海を渡るさん
私もご無沙汰してますが、
ときどき、思い出したら、気が向いたら、
そんなテンポでいきましょう。(自己弁護でもあります)
摺本さんの作品展は、
忘れそうになっていた物づくりの感覚を
それとなく刺激されました。

◎barbieさん
近ければ、ってbarbieさんの場合は、
距離感覚が普通と違いますからね、
ちょっと不思議なリアリティがありますよ。
今は透明な素材がいくらでもありますからね、
少年の夢も実現しやすいでしょう。

◎絵かきさん
摺本さん、ほんとうに元気です。
きっと充実した物づくりの日々を
送られているのでしょう。

◎つなみさん
摺本さんは米ヒバ材と出会って、
物づくりに火がついたと話されていました。
持った感じ、触った感触も、とても良いものでした。

by e-g-g (2011-02-24 17:20) 

あら!みてたのね

こんにちは。
木の温もりを感じられる木工自動車は夢が膨らみます! 男のロマン!
子供の頃、お抱えの大工さんに乗れる木製自動車を作成してもらって、乗り回した記憶がよみがえります(笑)

by あら!みてたのね (2011-02-25 16:45) 

mimimomo

こんばんは^^
ご訪問、過去記事も~ありがとうございました♪
↑あら!さまのお抱えの大工さん(?@@ だれそれ・・・
by mimimomo (2011-02-25 18:00) 

OJJ

 手先が不器用なので工作は好きですが、作品はほとんど無い・・
↑ mimimomoさん、知らざ~言って聞かせやしょう・・ 
  播州明石生まれ左甚五郎さんの末裔で~す。 ウケケケ 落語・抜け雀!
by OJJ (2011-02-25 20:13) 

ナツパパ

わたしも不器用ものなのですが、ここは惹かれます。
なにか作ってみたいなあ。
by ナツパパ (2011-02-25 21:44) 

Combat!

今の時代はなんでもかんでも便利すぎる時代になってしまいましたね。今、自分の子供達を見ているとスイッチを入れたらすぐ動くGameばかり。何の工夫も創意もない。だから今の子供達は工夫しよう、改善しようという気概がなくなりましたね。
もっと子供達に考えさせたいと思っています。この記事をみてノーチラス号のプラモデルを思い出しました。昔のプラモデルも大変、良くできていましたがそれでも、パテで埋めたり、バリを取ったり塗装したりと工夫して自分なりのものを作っていたように思います。そういうものがこれからの日本には必要ですね。ましてや木の模型は温もりがありますね。^^
by Combat! (2011-02-25 23:31) 

春分

小学校の頃にはすでに40年代ですが私も模型好きの方でした。
キットから入りましたが高学年にもなると自分でバルサ材やギアボックス等を
買い込んでが多かったかも。「模型とラジオ」が一番お気に入りの雑誌でした。
書かなくてもいいのに書いてしまいますが、ヒューム管ではなくニューム管。
飛行機作りにも欠かせぬ素材でした。竹ひごを繋いで翼を作りましたね。
by 春分 (2011-02-27 10:15) 

e-g-g

◎あら!みてたのねさん
お抱えの大工さんとは、これはまたなんと贅沢な!
でも、そういう「つくりもの」が、ある時代までは
確かにありましたね。

◎mimimomoさん
毎日は伺えないので、まとめて読破!です。
お抱えの大工さん、ほんとにトンデモナイことです。

◎OJJさん
左甚五郎の末裔、、、日本のいたるところに
居たのでしょうね、かつては。

◎ナツパパさん
なんでも手際よくできてしまうより、
不器用な手先の方が、良いかもしれませんよ、
いろいろと創意工夫をすると思いますから。

◎Combat!さん
子供も、ゲームの中で工夫と創意を
それなりに発揮しているのでしょう。
ただ、世の中にはもっとたくさんの面白いコトやモノがあるんだよ、
と、やはり周りも色々と工夫することが大切でしょうね。
今は、子供の遊びのメニューがちょっと少ないような気がします。

◎春分さん
50年来の間違いを教えていただき、ありがとうございました。
ところで、私のまわりでは皆ヒューム管と呼んでいました。
(といっても、仲の良い小学生仲間の4、5人ですが)
きっと、誰かがどこかで間違えたか、あるいは訛ったんでしょうね〜
それともワタシの聞き取り能力の問題、、、
ともかく、
教えていただかなかったら、死ぬまで「ヒューム管」でした。

竹ひごを使った飛行機づくり、楽しかったですね、
ずいぶんと熱中しました。
ヒューム管があるからこそ出来るんだ!と思いながら。
by e-g-g (2011-02-28 15:53) 

おとしぶた

私はプラモデルを趣味としているので、大変興味深くおはなしを読ませていただきました。75歳の方がそれだけ元気でらっしゃるということを伺い、反省至極です。
摺本さんのバイクの絵もいいですね。
by おとしぶた (2011-02-28 20:40) 

e-g-g

◎おとしぶたさん
プラモデルが趣味と伺って、はて自分のことを考えると、
十代の頃以来まったく作っていませんね〜
今のプラモデル、ちょっと覗いてみたくなります。
75歳の摺本さん、ほんとうにお元気でしたよ、刺激されます。
by e-g-g (2011-03-01 23:50) 

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