So-net無料ブログ作成

レオン・フライシャーのピアノ(NHK芸術劇場) [聴く・クラシック音楽]

20091207_Fleisher Szell.jpg

 レオン・フライシャーの演奏に接したのは、ジョージ・セル/クリーブランド管と録音したレコードが最初だった。ベートーヴェンの協奏曲全集、シューマンとグリーク、それとブラームスのピアノ協奏曲。どれもセルを聴くために求めたLPで、たまたま共演者がフライシャーだったということ。
 いまではあまり聴かなくなってしまったこのLP、セル/クリーブランドのカチッと引き締まった造形美と、テンポもタッチもそれに良く合ったピアノ、その印象は強く残っている。

 そのフライシャーが、右手が使えなくなるという難病に冒されたという話は、なんとなく耳に入っていた。が、そのピアニスト自身のその後に、それほどの注意を払っていたわけでもなく、私の音楽記憶からもだんだんと消えかかっていた。

 金曜日(12月4日)の夜、NHKの芸術劇場のプログラムにフライシャーの名を見つけた。そして聴いた。じつに久しぶりに音楽に聴き惚れた。
 81歳という年齢や、ジストニアという難病をある程度までは克服したという話、それらは実はあまり知らない方が、音楽を素直に聴くことができると思う。
 では、そういった諸々に心が動かされないかというと、もちろん、そんなことはない。加えて、私の場合は、三十数年も昔のLP時代の記憶もある。素直に聴け、というほうが難しいかもしれない。

 ところが、この日のテレビカメラを通して届く音楽は、そんな諸々を忘れてストレートに耳と心に響いてきた。
 静かに語りかけるように始まる一曲目から最後のシューベルトまで、大仰さのない、まるで何かを慈しむかのような暖かい音楽が奏でられる。
 聴き終わってから、久しぶりに音楽を聴いて幸せな気分に包まれた。演奏技術の詳しいことはわからない。が、ケレン味のない清新な表現とはこういった演奏なのだろう、と思った。実のある歳の重ねかたも、そして病との戦いも、この暖かい音楽を紡ぎ出すための過程だったのだ、と。

J.S.バッハ/ペトリ:カンタータBWV208より『羊たちは安らかに草をはみ』
J.S.バッハ:カプリッチョ『最愛の兄の旅立ちにあたって』BWV992
J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ BWV903
J.S.バッハ/ブラームス編曲:シャコンヌ
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960

 これが10月19日、武蔵野市民文化会館の小ホールで演奏されたプログラム。
 この二、三年、新譜情報にもコンサート情報にも疎くなってしまった。この演奏もたまたまテレビで見なかったら、それまでである。来年は少しは注意してみよう、と思う。
 それにしても、この晩、武蔵野市民文化会館の小ホールに居合わせた人々はとてつもなく幸せである。羨ましい


写真はブラームス/ピアノ協奏曲第一番のLP。レオン・フライシャー(ピアノ)、ジョージ・セル指揮/クリーブランド管弦楽団。メモを見ると1976年購入とあった。

nice!(47)  コメント(16) 
共通テーマ:音楽

nice! 47

コメント 16

narkejp

こんにちは。酔っ払いにはもったいないような、いいテレビ番組でしたね。当方、ラーメンを食いに出かけなくてよかった。旅館のテレビで、いい気分で番組を堪能しました。セルとクリーヴランド管によるブラームスのピアノ協奏曲の録音は、ゼルキンとの盤ばかりで、このフライシャーとの録音を、ひそかに狙っております。来年、没後40年の記念に、再び国内盤が発売されることを願っています。

by narkejp (2009-12-07 19:55) 

よしあき・ギャラリー

クラシック音楽にも
造詣が深いのですね。
by よしあき・ギャラリー (2009-12-08 06:08) 

e-g-g

◎narkejpさん
私も、始まったときはちょうど良い加減に酔いが回っていて、
たぶんこのまま睡眠、、、といった感じでした。
でも、これはほんとうに良い番組でしたね。
ときおり、こんな番組が流れるので、
なかなかテレビから離れられません。

ゼルキンとのブラームス、これも良いですね、
音楽が始まった瞬間の緊張感、あれはたまりません。
それにしても没後40年ですか、、、
30年くらいまでは、かろうじて時を引っ張っている感じですが、
40年となると、もう歴史上の出来事、そんな感じもします。

◎よしあき・ギャラリーさん
いえいえ、ただ好きなだけですよ。
それに、クラシック以外もいろいろと聴きますよ、
ちょっと手当りしだいですが。
ただ、クラシックを聴き込んだおかげで、
実にいろいろなものを教えてもらいました。
バッハにも、モーツァルトにも、もちろん演奏家にも感謝です。

by e-g-g (2009-12-09 14:45) 

mimimomo

こんにちは^^
音楽にはかなり疎いですが、聴くのは好きです。
いい音楽は、自分を豊かにしてくれるような気がします。
by mimimomo (2009-12-09 15:52) 

e-g-g

◎mimimomoさん
若い頃にクラシックを聴き始め、
その魅力に引き込まれて以来、うん十年といったところです。
でも、ちあきなおみもいいなぁ、忌野清志郎も、、、
と、好きな音楽は多方面。
良い音楽、たくさん聴きたいですね。

by e-g-g (2009-12-09 17:59) 

風子

e-g-g さんのBlogを読んで 
番組は見なかったけれど、共感できます。
音は生き方と共鳴して私たちに届くのかもしれませんね。
そして聴く側も人生を重ねるごとに 届く音色も違ってくるのでは。
私も理屈は分からないけど、聴くのは大好きです♪
by 風子 (2009-12-09 22:38) 

こぎん

すごいですね~、81歳で現役音楽家なんですか?
最近、同じリズムを刻むことも ? なんか付いていけてない!って思っているんですが、
音楽が人生そのものなんですね。

by こぎん (2009-12-10 08:01) 

いろは

こんにちは^^
私も最近音楽会に行っていない事に気が付きました(^_^;)
アルテの会に入っていながら、なかなかチケットが手に入りません。
予約日に電話をしても繋がらなくて・・・
武蔵野市は希望者が多くて大変です(^^)
家でCDをかけることも最近少なくなっていました。
又折りにふれて聴いてみようと思います。
by いろは (2009-12-10 15:07) 

e-g-g

◎風子さん
>音は生き方と共鳴して届く
たしかにそうですね、
若い頃に比べれば、ずいぶんと聴き方も変わったと思います。
見過ごしていた何やかやが、何かのはずみでスッと
聴こえてくることもあります。

音は鳴った瞬間から人の気持ちに訴えかけてきますね。
その功罪を意識しながら、心に響く表現を探したいものです。

◎こぎんさん
高齢の指揮者は多いですが、
体を直接的に使う演奏家にとって加齢は大問題でしょう。
技術をカバーする精神性、、、なんて良く耳にしますが、
プロとなると、そんなに簡単なことではないですよね、きっと。
この日のフライシャーさんは、ほんとに良かったですよ。

◎いろはさん
コンサート、映画、舞台、、、
エンジンがかかると連続するのですが、
いちど停止すると、そのままになりやすいですね。
見つけた時にパッと行動できるように、
気持ちの余裕と準備をしておきたいものです。

by e-g-g (2009-12-11 17:03) 

のすけの母

この番組、録画はしたんですが、まだ見てません。
ここのところ、仕事が忙しいのとインフルエンザとのWパンチで、少々まいっております。
今夜はコンサートへ行って命の洗濯をしてまいりましたが、この番組を早く見たいです。
by のすけの母 (2009-12-12 00:02) 

愚理庵

神の手のピアニストっているのですね!絵を描く方にも....。
by 愚理庵 (2009-12-13 05:15) 

e-g-g

◎のすけの母さん
やはりコンサートは良いですよ、録画はごゆっくりと。
滋味に溢れたピアノです。
インフルエンザの季節ですけれど、新型じゃないですよね?
どうぞ、お大事に。

◎愚理庵さん
コメント、ありがとうございます。
表現技術、それも人に訴えかける力を持つ、
これはやはり凄いことですね。

by e-g-g (2009-12-16 16:55) 

e-g-g

◎xml_xslさん

◎Krauseさん

◎匁さん

◎ムーミンさん

◎カフェオランジュさん

◎pace sann

◎watamiさん

◎miopapaさん

◎広島ピアノさん

◎奥津軽さん

◎今造ROWINGTEAMさん

◎frutistさん

◎甘党大王さん

◎フェイリンさん

◎青の風画さん

◎響さん

◎絵瑠さん

◎ミカチさん

◎kakasisannpoさん

◎HEIJIさん

◎いそしぎさん

◎アマデウスさん

◎sungenさん

◎春分さん

◎gillmanさん

◎COCOさん

◎タックンさん

◎shinさん

◎甘茶さん

niceを、ありがとうございます。

by e-g-g (2009-12-16 16:57) 

e-g-g

◎ガマさん さん

◎mitsuさん

◎ミモザさん

◎くらいふさん

◎へー八郎さん

niceを、ありがとうございます。

by e-g-g (2009-12-25 20:57) 

Enrique

古い記事ですが,私もこの番組について記事を書いていました。
http://classical-guitar.blog.so-net.ne.jp/2009-12-22-1
片手のシャコンヌにすっかり魅了され,余り好きでなかったこの曲をこの後ギターで弾くことになりました。
by Enrique (2017-02-21 13:49) 

e-g-g

◎Enriqueさん
わざわざ古い記事をご覧いただきありがとうございます。
このTVを見てからもう7年も経つのですね!
感覚的には三〜四年前かと思っていました。
「フライシャーの語り」のほうも、じっくりと拝読させていただきます。

by e-g-g (2017-02-26 18:50) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。